加地邸をひらく━継承をめざして
住宅遺産トラストの展覧会「加地邸をひらく━継承をめざして」を見学しました。
遠藤新設計の「加地邸(1928)」はなんと86年前!に竣工した葉山の別荘で、照明器具や家具がそのまま残された室内に、実測調査した資料などが展示されていました。建物へのアプローチは南向きの傾斜を利用して計画され、坂道と階段を登った先がそのまま玄関になり、その東側には庭が広がっています。
庭に面した建物の南側には列柱によって軒下空間がつくられ、居間の前面にはトップライトのあるテラスが設けられています。テラスの東側にはサンルームが突出し、その窓は正面だけでなく軒下の側面まで連続しています。
この室内には居間からステップを二段降りて出入りし、多角形の部屋に合わせてデザインされたテーブルやソファーや、部屋の床仕上げには「籐」が張られていました。
また、テラスの端に設けられた小さな池は、火災に備える目的も兼ねているそうです!建物の東側には三部屋の寝室等がまとめられ、その開口部の木製建具は外部から順に、ガラスの開戸と格子、室内側に上げ下げ式の網戸が設えてありました。
そして、軒先は雨樋と一体的に造られていて、縦樋も目立たないように計画されています。開口部の上の小さなガラリは室内側で開閉できる通気孔で、留守期間中に戸締りしていても換気ができるように配慮されています。これらの建具や軒先の木部は変色していますが、痛んでいるようには見えません!驚きです!
玄関ポーチの西側は、大谷石で囲まれた地階のピロティーになっています。
そこは敷地の中で見晴らしが良い場所になっているため、成長した植え込みの木々がなければ額縁のような開口から山並みが見えていたそうです。
壁際には大谷石のベンチがあり、その正面には噴水のある水盤が設えてあります。居心地が良くて落ち着く空間になっていました。ピロティー上部の1階には半屋内空間となったテラスが配置されていて、さらに2階のパーゴラが設けられた展望室からは遠く相模湾が望めました。
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