カニンガム・ハーモニー・ハウス

 
軽井沢の「カニンガム・ハーモニー・ハウス(1983)」は音楽を練習するための宿泊施設で、建築された当初は西向きに浅間山が眺望できたそうです。
ラウンジに繋がる玄関へのアプローチはスロープになっていて、出入り口ドアと事務室の受付部分は屋根の軒先を深くすることで雨が掛からないようになっています。
しかしながら、現況では軒先と鬱蒼とした樹木が近く、湿気や雨で濡れて乾燥しにくいためでしょうか、軒裏などの木部が少し痛んでしまっているようです・・・。
それでも、その軒下で守られている外壁のモルタル塗り刷毛引き!という超ローコスト仕上げは、補修されていない既存のままでも目立った汚れやひび割れがありませんでした。

内開き玄関ドアの隣にある嵌め殺しガラス部分は、ドアの反対側に設けられた戸袋から引き出された雨戸によって戸締りされるようです。

アプローチに面した窓台が来客等の際に受付カウンターとなっていたようで、その木製建具の引違い窓に触れてみると軽く動いてびっくり!
玄関の隣に配置されている事務室部分は、室内への出入り口が開けられた玄関ドアの背面に隠れてしまっていて不便なように感じられました。
また、ここで靴の脱ぎ履きをしていたため、利用者のために下足入れが設けられていた筈ですが、オリジナルの建築はどのようになっていたのでしょう?

ラウンジは音楽の練習場として計画されていて、その空間の南側は屋根の勾配と敷地の傾斜の高低差を利用してロフトのようになっています。
その二層部分の上部は舞台を兼ねたホールで、下部は別空間として食堂が配置されていました。
それぞれにはラウンジからスロープで行き来する動線になっていましたが、用途が変えられた現況では残念ながら通ることはできませんでした。
食堂へのスロープに代わる動線が必要になったことにより、廊下の一部が玄関から土足で通り抜けできるように改装され、元々床がつながっていた宿泊棟の廊下入り口には下足入れが置かれていました。
更に、この部分の改装に伴って、来客用トイレはドアがラウンジに向けて開くように変更されていました。・・・開閉時はラウンジから室内が見えてしまうようです・・・。

ロフト下部にあった食堂は新しく飲食店に改装されていましたが、そこへのアプローチは玄関から一度外部のテラスに出て、室内の西側に設けられていた窓から出入りする動線になっています。
そのテラス部分には仮設のような屋根が新設されていましたが、その奥の階段部分では雨除けが設けられていないため、小雨が降る中での移動に戸惑ってしまいました。
2階バルコニーと1階のデッキ部分のオリジナルは、その床板を受ける部材が室内から外部まで跳ね出されていて、宙に浮いたように軽やかなデザインになっています!
その工法は「小さな森の家 吉村山荘」と同じようになっています!

しかし、改装後のデッキではオリジナルの面影がまったく無くなってしまい、バルコニーの取り替えられた手摺には視線を遮るように板が張られています・・・。
そもそも、建物の周囲は樹々が鬱蒼としていて、見晴らしに配慮する必要もないのかもしれません(涙)。

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