イタリア大使館 日光山荘

 中禅寺湖の畔に残されている「イタリア大使館 日光山荘」は、アントニン・レーモンドの設計で1929年に夏季の別荘として建築されたそうです。現在の建物は国の登録有形文化財に登録され、栃木県の修復により「イタリア大使館別荘記念公園」の本邸として公開されています。辺りに雪が残る冷たい雨の日でしたが、夏の暑さを想像しながら見学しました(笑)。

湖に面した屋内ポーチは、広縁の様に開口部が連続し開放的になっています。ここでは、建具や家具まで『できる限り再利用して復元』し、椅子も同じ柄のイタリア製生地を使って修復しているそうで、大切にされている事が伝わってきました!

この肘掛椅子に座って外を眺めれば、中禅寺湖の景観が楽しめる筈でした・・・。

屋内ポーチの奥には居間を中央に食堂と書斎が並べられていて、各部屋は欄間で区切られていますが湖へ向かって一体的な幅広の室内になっています。
杉皮張りで仕上げられた壁と天井には、それぞれ部屋別の模様が復元され、表面を削って再利用された床板には、古い釘の跡が残っていました。
ノエミ・レーモンドがデザインしたであろう天井の照明器具までは復元できなかったようで、食堂と書斎には北欧デザインの同じペンダントライトが灯されています。
夏季用の別荘ですが、部屋の両側には暖炉が設えてあります。

食堂の西側に配置されたゲストルームは休憩室として使われていて、大きな掃き出しのコーナーウインドウから湖が見渡せました。
この部屋の裏側には厨房などが配置され、ゲストルームと食堂までのサービス動線と出入り口がまとめられています。
外観からは水平ラインの強調と軒先の様子が、ユーソ二ア住宅に似ている気がします!

2階では四部屋の寝室が湖に向かって並んで配置されていて、その内の三部屋が公開されています。
建物の中央だけでなく角に配置された部屋でも、窓は湖に面して1カ所あるのみで、あえて他に開口部が設けず視界を限定させているように思われます。
通風の為に窓を設けなかったのは、避暑地の建築だからでしょうか?

園内には本邸と同じようにデザインされた小さな副邸もありましたが、こちらはレーモンドの設計ではなく文化財にも指定されていないようです。
二棟の屋根はきれいに板金の段葺きで仕上げられていますが、建築当時の工法や設計手法を考えると違和感があるようです。

コメント

人気の投稿