宮殿
皇居「宮殿(1968)」では儀式と行事のための「正殿棟」を中心に、宴会の儀が行なわれる「豊明殿棟」と拝謁等に使用される「長和殿」が中庭を囲むように繋がれています。
『飾り立てた宮殿』ではなく、『日本の気持ちから出た』『簡素でありながら美しい』建築。これは理解し難いことでしょうか?
東庭から撮影した「長和殿」の外観は日本の伝統的な木造建築のような佇まいですが、宮殿の各棟は柱と梁が現された鉄骨鉄筋コンクリート造の構造躯体に、深い軒の出で鉄骨造の屋根が載せられた特殊な近代建築です。
そして、緩やかな勾配の屋根は、過去の建築の『精神』を学んだ『新しい技術で、美しい形』として、部分的に実物大の模型まで制作して設計されたそうです!
以前に「吉村順三記念ギャラリー」で、「宮殿」の設計を担当されていた上田先生に貴重なお話を伺ったことがあります。その興味深い内容の一部として、
・「君子南面す」として考えられていた南向きの計画原案を、敷地の状況と東京駅との関係を読み取って東向きに変更。
・広くとられた東庭の地下を駐車場にして自動車を隠しつつ、そこから参殿者が「長和殿」へアプローチできるようにする。
・正殿で行なわれる儀式を妨げることがないように、隣室に取材のための「報道室」を発案。
このような提案と共に、必要となる様々な動線の計画も検討されたそうです!
宮殿各棟の矩計図を見比べると、それぞれは一定のバランスが保たれたまま、建物断面の大きさが変えられているように感じられました。
このバランスは各棟の用途や広さから床高と天井高が設定され、それによって建物の軒高が決まり、その高さにあわせて軒の出が計画されているように思われます。
『構造体の寸法や比例』も、この造形美を会得するための「鍵」になりそうです!
この宮殿は基本設計された建築の空間がそのまま実現されているそうですが、閲覧することができる室内の写真からは少し違和感が感じられます。
そもそも建築を創り出すための「基本設計」と「実施設計」に明確な区別はなく、計画から推敲を重ねた完成までが『建築設計の仕事』だと思います。
「吉村順三記念ギャラリー」で配られたパンフレットです。
『一貫性こそ設計の生命』として、『扉の引手ひとつまでが、建物全体と調和』することができていれば・・・。
コメント
コメントを投稿