ニューヨーク郊外のゲストハウス
1962年に竣工した「ニューヨーク郊外のゲストハウス」は、広大な敷地の中に日本庭園とあわせて設計された「茶屋」のような住宅です。
建物正面からの写真では、屋根の重なりが建物の奥行きを感じさせ、水面に垂直と水平ラインが美しく映っています・・・。
滝の上に建てられたF・L・ライトの「落水荘」と同じように、自然にあわせて造られたシンプルな水平ラインは感動的です!
建物は西向きの傾斜地にあわせて計画されていて、来客は日本庭園の池を渡ってアプローチし、南側の勝手口は母屋に繋がっていると思われるそうです。
ゲストハウスだけでなく茶室としても合理的で、床面積は21坪あまりのコンパクトな平面計画になっています。建物への主な出入り口は沓脱石と濡れ縁の式台になっていて、玄関や水屋を兼ねた「六畳の間」の踏み込みから南側にまとめられた水回りの諸室へ繋がっていきます。
「主室」等の天井には照明器具が設けられていないため、夜間は電灯ではなく行灯や燭台が明かりとして使われていたようです。逆に暖房設備は電気ヒーターの熱がダクトによって建物全体に届くように計画されていて、この「主室」では吹き出し口が目立たないように床の間の天井部分に隠されています!
縁側に面した開口部には欄間障子も設けられていますが、その建具の重みを支える細い鴨居に吊り束はありません。
『純粋』で『誠実』なデザインだと思います!
縁側部分の写真からは、建具用の溝が縁側の外側と内側に掘られていてることがわかります。
手摺内側の3本溝は柱の間に設けられ、そこに必要に応じて雨戸や網戸の引き違い戸が建て込まれるようです。
障子戸外側の1本溝はガラス戸のためにあり、その建具は「雨戸廻し」のように出隅を回転させて戸袋にしまえるため、全てを開け放つと引違の障子戸だけが残るようになっています!
矩計図には水面の上にせり出した縁側部分の美しいプロポーションが表されていて、図面の寸法から床の先端と軒先の位置関係が読み取れました。
試しにそのバランスを皇居宮殿の「長和殿」と比較してみたところ、見事に一致して驚嘆!さらに、あの『小さな森の家 吉村山荘』の断面スケッチを左右反転してみると・・・?
「むくり」のある屋根は桧皮葺のため、「長和殿」の「そり」屋根よりも僅かに勾配が急になっています。「むくり」も「そり」も極めて微妙につけられています!
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