成城五丁目猪股庭園

 「成城五丁目猪股庭園」として公開されている「旧猪股邸住宅(1967)」では、庭園だけでなく吉田五十八によって設計された旧住宅の室内まで見学することができました。
この敷地は東側と北側の道路に面する角地で、表門の東側から玄関前庭と離れのような茶室にアプローチし、裏門の北側には車庫等がまとめて配置されています。
そして、広さは560坪以上もあり形状は正方形に近く、平屋で110坪もある『近代数奇屋』の南側は回遊式の日本庭園になっていました。
表門の内側は待合のようになっています。
玄関引戸は「山口蓬春記念館」の内玄関と同じく、二重の建具が壁の内部に引込まれるようになっていました。
玄関からの正面には地窓が設けられてあり、そこから中庭の様子を窺いつつも、その奥の食堂とは視線が合わないように計画されているようです。
照明器具は天井面に埋め込まれてフラットにデザインされていました。

こちらは、「山口蓬春記念館」の玄関引戸内玄関です。

玄関ホールから「く」の字の渡り廊下によって繋がっている茶室は、主屋の南東へ突出しするように別棟で配置されています。
この茶室の南側と西側の窓の前には靴脱ぎ石が設けられているので、それぞれを躙り口と貴人口として使い分けられていたようです。
待合は主屋の軒下に設けられていました。

この住宅では居間は広さや玄関との位置関係等から、生活する夫婦二人のためだけでなく、応接間としての用途も兼ねて計画されているように感じられました。
南面の開口部は天井に対して高さが抑えられているため、周囲の壁面が逆光で暗く感じられますが、室内からの視線は低くなり庭が美しく観えています。
部屋の北側にはダイニングの隣に中庭が設けてあるので、暗くなりがちな奥行きが深い付近でも明るく風通しの良い空間になっていました。
中庭を2カ所に分けて計画することによって屋根のボリュームは抑えられ、建物のバランスが低く抑えられているようです。

夫人室は居間の隣に配置されていますが、本来の意図とは違って実際は居間のように使われていたそうです。(その気持ち、分かります・・・。)
しかしながら、居間としては南面する開口部だけの採光では、天井の照明が灯されていても室内が薄暗く感じられました・・・。 
その隣にある次の間や和室では、同じような条件でも障子戸を通った光が拡散することによって、室内が均一に明るくなっているようです。
やはり、隣り合う部屋を壁ではなく引戸で仕切る日本的な平面計画の方が、生活の状況に合わせて応用が効きそうかも? ※あくまで個人の感想です(笑)。

主屋の西側に配置されている茶室と書斎部分は、吉田五十八の弟子による設計で増築されたそうです。
書斎は南側に突出させることによって出隅に開口部が設けられていて、その建具は壁の中に引込まれるため、室内から開放的に庭園を眺めることができました!
書斎や茶室に出入りするには、寝室と思われる和室の縁側を通る計画になっているため、配置と動線から私的に使われる部分のように思われます。




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