「宮脇檀 手が考える」展の見学会
展覧会「宮脇檀 手が考える」に合わせて行なわれた住宅の見学会では、埼玉県川口市で1983年に建てられた「中山邸」を内覧させていただくことができました。
この住宅の敷地は広く南東の道路側には古い長屋門が残り、周囲は堀に囲まれているため、名主の屋敷として江戸時代から続いてきた土地のように思われます。
そのため、この住宅の設計は「土地の持っている時間の流れ」を後に伝えるように計画されたそうです。
外観は切妻屋根が連なった木造平屋建てのように見えますが、住まいの公的部分は木造によって「透過」や「連続」し、私的部分はRC造で「閉鎖」するように守られ、それぞれの空間が組み合わされた混構造になっています。
建物の南東側に突出した部分はRC造で、そこにポーチ部分と隣り合うように書斎が配置されていてます。この書斎は長屋門からのアプローチや、玄関等からの配置を考えると応接室を兼ねていたようにも想像できます。
書斎だけでなく、玄関ホールの室内空間も、外観から受ける印象とは違った雰囲気が感じられます。
そもそも、この住宅の資料には、『日本の住居を創ろうという意識はあったが、<和風>の住宅を創ろうとは決して思わなかった』と記されていました。ここでは、あえて屋外が見えないように地窓が設けられています。ホールの北側には中庭が設けらていて、その西側は居間、北側は食事室と台所、東側は台所からホールへ繋がる渡り廊下になっています。中庭を囲む部屋の用途にあわせて動線が回遊し、それぞれに視界と風通しを配慮した開口部がデザインされていました。しかしながら、台所と居間の間に配置された食事室は、竣工時から用途が変わってしまい家事室として使われているようでした・・・。
用途と空間を限定しているプランでは、長いスパンで生活の変化に対応し続けることが難しくなるのかもしれません・・・。
この居間によって建物全体が繋がれているため、部屋の北側は通過動線として廊下状の空間になっていました。
建物の西側に奥まって配置された部分はRC造で、そこに私的部分がまとめられています。
居間から続く廊下には、壁面から屋外側に出された収納と、その上下に高窓と地窓が設けられています。この北西部分は、南向きで三人共用を想定した子供室と、北向きに主寝室が配置されています。資料によると、出窓部分はRC造の壁で閉ざされていながらも、通風と採光が採れるように細かく工夫されていました。
洗面台の斜めになった鏡の壁面部分は、裏側で奥まった位置に配置された便所に窓を採るための工夫です。
それにしても、これだけの住宅が築30年余りで取り壊されてしまうとは・・・。
コメント
コメントを投稿